あたまのかたち外来
1.赤ちゃんのあたまのかたち、気になりませんか?
赤ちゃんを抱っこしたとき、お風呂上がりに髪を拭いているとき、「あれ?あたまのかたちが少しゆがんでるかも?」と、気になったことはありませんか?
健診や予防接種の際に、相談してくださるご家族は少なくありません。
ネットで検索すると「向き癖」「ドーナツ枕」「ヘルメット治療」といろいろな情報が出てきて、「治療するほどなの?」「どう対応したらよいの?」と何が正解なのかわからなくなってしまいますよね。
赤ちゃんは生まれる時にお母さんの産道を通るため、頭蓋骨は柔らかく数個に分かれた状態になっており、出生後1年から1年半をかけて頭蓋骨は繋がりながら成長します。
そのため出産時の通り道の関係や、お腹の中にいた時の体勢、そして生まれてからの重力の影響で頭の形が変わります。
「こんなこと相談していいのかな?」という迷いが、「相談してみようかな!」に変わるよう、少しでもお役に立てれば嬉しいです。
2.なぜ今、あたまのかたちの相談が増えているのか?〜SIDS対策との関係〜
実は近年、赤ちゃんのあたまのかたちのゆがみの相談は増加傾向にあります。
その大きな理由の一つに、SIDS(乳幼児突然死症候群)の予防が深く関係しています。
1992年、米国小児科学会はSIDS(乳幼児突然死症候群)のリスクを低減するため、赤ちゃんを仰向けで寝かせることを推奨しました。
これによりSIDSの発生率は劇的に減少しましたが、その一方で、赤ちゃんの頭が同じ位置に固定される時間が増え、「絶壁」や「左右非対称」などのあたまのかたちのゆがみ(位置的頭蓋変形)の発生率は以前と比べ4倍〜6倍に増加したと報告されています。
「命を守るための仰向け寝」は必要です。 だからこそ、寝ている時は仰向けで安全を確保し、起きている時間は姿勢を変えてあげる工夫が、現代の育児においてより重要になってきています。
3.まずはあたまのかたちが「病気」ではないかを確認する
あたまのかたちの変形で最も大切なのは、それが「寝かせ方などの外部からの圧力によるもの(位置的頭蓋変形)」なのか、あるいは「頭蓋骨の病気」なのかを正しく鑑別することです。
頭蓋骨早期癒合症(ずがいこつそうきゆごうしょう)
生後、赤ちゃんの脳は急速に大きく成長できるように、頭蓋骨は6種類8個に分かれており、継ぎ目(縫合)に遊びがあります。
この継ぎ目が通常よりも早くくっついてしまう病気が「頭蓋骨早期癒合症」です。
脳が大きくなろうとする力を骨が邪魔してしまい、頭がいびつな形になるだけでなく、脳の発達に影響を及ぼす可能性があるため、この場合は手術が必要になることもあります。
「向き癖を直しても形が変わらない」「頭の大きさ(頭囲)の伸びが悪い」「特定の場所だけが極端に盛り上がっている」といった場合は、専門医による診断が必要です。
あたまのかたちのご相談があった場合は、当院では医師が診察を行い「病気の除外」を行います。
もし病気が見つかった場合は、専門機関へご紹介をさせていただきます。
4.あたまのかたちのゆがみはいくつかのパターンがあります
あたまのかたちのゆがみが病気によるものではなかった場合は、向き癖や寝方による圧力が原因で頭のゆがみが生じる「位置的頭蓋変形」と呼ばれます。
「位置的頭蓋変形」はあたまのかたちに応じて「斜頭症」「短頭症」「長頭症」の3つに分けられます。
「位置的頭蓋変形」
- 斜頭症(しゃとうしょう)
後頭部の片側の成長が抑えられ、後頭部が斜めにゆがんでしまい、左右非対称になっている状態です。
主な原因は、向きぐせや胎児期の子宮内環境による後頭部への圧力とされています。
重症例では耳の位置や顔面が左右非対称になってしまうこともあります。
- 短頭症
後頭部の成長が抑えられることで、後頭部が丸くならず平坦になってしまう状態です。
一般的に絶壁とも呼ばれます。
主な原因は、赤ちゃんが仰向けに寝ることで後頭部に圧力がかかることによるものとされています。
- 長頭症
頭部が縦に長く伸び、後頭部が著しく突き出ている状態です。
長頭症は、病的な変形の特徴と似ているため、注意が必要です。
主な原因は、横向きに寝ることによって側頭部に圧力がかかることとされています。
5.あたまのかたちのゆがみ対策・治療
あたまのかたちのゆがみ対策・治療
①理学療法
病気が否定される場合、多くは「向き癖」が原因です。
これを予防・改善するために、ご家庭で今日からできるのが「体位交換(ポジショニング)」と「タミータイム(うつ伏せ練習)」です。
体位変換(ポジショニング)
意識的に赤ちゃんの頭の向きを変えてあげることです。
授乳や抱っこの際に左右バランスよく顔の向きを変えられるように、寝かせる位置や抱く腕を入れ替えるようにしましょう。
ベッドメリーやおもちゃや音の鳴る方向を定期的に入れ替え同じ方向を向かないようにしてみてください。
それでも赤ちゃんには好んで向く方向がありますよね。
そんなときは無理に顔だけを向かせようとするのではなく、体全体を少し傾けてあげることもコツです。
向き癖のある側の背中から腰にかけて、丸めたタオルを差し込み、体が30度くらい反対側に傾くようにサポートをします。
ただし、完全に真横を向かせると、うつ伏せになってしまい、窒息のリスクがあるため、あくまで「少し傾ける程度」にとどめ、必ず大人の目が届く範囲で行ってください。
タミータイム
生後1ヶ月頃から、まずはお父さんやお母さんの胸の上に赤ちゃんをうつ伏せに乗せてみてください。
首の座っていない状態でのうつ伏せは、恐怖心もあると思うので最初は数秒から始めてみてください。
首の力が少しずつ付いてきたら硬めのマットや畳の上で練習します。お気に入りのおもちゃを目の前に置いて赤ちゃんが顔を上げたくなる環境を作ってあげましょう。
うつ伏せで過ごすことで、頭の後ろや横にかかる重力をゼロにします。
また、 首や背中の筋肉が鍛えられ、首すわりを助け、自力で頭を動かせるようになります。
※注意点
1.必ず大人がそばで見守る:赤ちゃんが疲れて顔を埋めてしまったり、疲れて動けなくなったりしたときにすぐに助けられるよう目を離さないでください。
2.硬い平らな場所で行う:ふかふかのクッションや布団の上は、口や鼻が塞がるリスクがあるため厳禁です。
3.赤ちゃんが起きているときに行う:眠そうなときや、寝てしまったときは仰向けに戻してください。そのままうつ伏せで寝かせないようにしましょう。
②ヘルメット治療
タミータイムや向き癖の矯正を行っても改善が難しい場合や、変形の度合いが強い場合には「ヘルメット治療」という選択肢があります。
2017年に日本で医療機器「頭蓋形状矯正ヘルメット」として厚生労働省で認可を開始しました。
治療の仕組み
- 根本的な形状改善: 頭の成長を利用する治療です。ヘルメットの装着により出っ張っている部分は成長を待機させ、凹んでいる部分にスペースを作ることで成長を促し、自然な丸みに導きます。
歯科矯正と異なり、力を加えて変形させるものではありません。
治療の時期
- 開始時期が早いほど効果的: 頭が急成長する生後4ヶ月〜6ヶ月頃に開始するのが最も効率的です。2013年の米国の研究にて、ヘルメット治療による斜頭症の矯正効果は、赤ちゃんの月齢が上がるにつれて低下することがわかっています。
治療上の留意点
- 装着時間の長さ
1日23時間の装着が推奨されます。
お風呂以外はずっと着けているイメージです。
ただし、発熱などの体調不良はもちろん、プールに入る、家族で記念写真を撮る、肌に赤みが出ているなどの場合に短時間外すことは問題ありません。
最重症の赤ちゃんの治療期間は平均4.0ヶ月で、最も長い治療期間となりました。
重症の赤ちゃんの治療期間は平均3.4ヶ月で改善が見られ、中等症の赤ちゃんの治療期間は平均3.5ヶ月となりました。
- 肌トラブル
赤ちゃんは汗っかきです。
ヘルメット内が蒸れて、湿疹やあせもができることがあります。
特に装着開始1週間は皮膚トラブルが起きやすいため、3〜4時間ごとに皮膚の観察が必要です。
- ご家族の負担
ヘルメットのこまめな清掃、定期的な通院、そして「毎日装着しなければならない」という心理的な負担があります。
- 費用
自費診療(自由診療)となるため、経済的な負担がかかります。
費用について
ご家族が安心して治療を継続いただけるよう、明朗な一律料金を設定しています。
治療費用:352,000円(税込)
- 上記料金には治療全体(自費診療)が含まれます。
- 毎月の調整費や再診料など、追加で発生する費用はございません。
- 自費診療(自由診療)となります。
- 破損、紛失等によるヘルメットの交換:220,000円(税込)
- 治療延長希望等による2個目のヘルメットの作製:220,000円(税込)
ヘルメットの管理方法とケア
治療を決断された場合、日々のケアが大切です。
- 清潔の保持
毎日ヘルメットを水道水で手洗いをし、においが気になる場合は中性洗剤を使用して洗います。その後タオルドライや室内干しにてしっかり乾燥させます。
ヘルメットについているクッションは1日1回を目安に洗ってください。(ネットに入れて選択可能)
- スキンケア
装着前に肌を清潔にし、必要に応じて保湿を行います。
湿疹が出た場合は、無理をせず一時的に装着を中断し、クリニックへご相談ください。
ヘルメットを装着し始めの1週間は特に注意が必要で、3〜4時間おきに皮膚状況(発赤や水疱)を観察してください。
- 匂い対策
汗の匂いが気になる場合は、専用のインナーを使用することもあります。
当院での治療の流れ
①初回診察
当院のホームページからLINEのお友達登録をしてください。
「一般小児外来」の「あたまのかたち外来予約」からご予約をお取りください。
「あたまのかたち外来専用枠」は毎週火曜日と金曜日の14:00〜、15:00〜、16:00〜です。
初回は撮影から結果が出るまで約30分は要するため、全体で約1時間はお時間をいただきます。
②医師の診察とカメラによる3Dスキャン
医師による診察で病的な頭蓋骨の異常の有無の確認(保険診療)を行います。
またあたまのかたちをカメラにて3Dスキャンをしてあたまのかたちのゆがみの重症度を測ります。
③治療の選択
自宅での理学療法を選択する場合は、看護師からタミータイムの方法や向き癖の改善方法についてご説明をします。
ヘルメット治療を選択される場合は、ヘルメットの柄を選んでいただき、ヘルメットを発注します。
撮影から2週間以内に初回の装着をする必要があります。
発注から1週間ほどで納品されます。
④初回装着
ご来院いただき、実際に装着してフィット感や強く圧迫されてしまう部分がないかを確認し、中のパットを調整します。
装着方法、ヘルメットの洗濯方法、皮膚の観察方法についてご説明します。
また、装着時間や経過の確認はアプリで行うため、アプリの使用方法についてもご案内いたします。
⑤定期受診
月に1回受診していただき、皮膚トラブルの有無や治療効果について診察を行います。
⑥ヘルメット治療卒業
あたまのかたちの改善度合いにより、治療期間が決定します。
低月齢でゆがみ度合いが低いほど治療期間が短くなる傾向にあります。
6. 最後に:あたまのかたちは「心の健康」にもつながる
「あたまのかたちくらいで病院に行くのもな」と思われる必要はありません。
あたまのかたちが整うことは、整容面だけの問題ではなく、将来のメガネのズレを防いだり、スポーツのヘルメットがフィットしやすくなったりという実用的なメリットもあります。
ただヘルメット治療は、費用や装着時間などの負担があるため、ご家族にとって大きな決断が必要な治療です。
だからこそ私たちは絶対にやるべきと押し付けることはしないとお約束します。
ご家族が医学的な視点でお話を聞き、納得して治療の選択ができることをサポートできたらと思います。
病気の有無を確認した上で、ご家庭での工夫で様子がみられるのか、ヘルメット治療を行うのか、ご家族の選択を尊重いたしますので、迷っている方はご相談ください。
あたまのかたちについてお悩みがある場合は、まずは写真撮影を行って治療の対象となるのか正常の範囲なのかを知っていただけたらと思います。
引用文献
診療時間
365日・土日も診療
| 診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 9:00~13:00 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
| 14:00〜18:00 | ◯ | ◯ | / | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
※水曜日は職員研修のため午後休診。
